ケーキ食った

ケーキ食った
二月頃まで、更新は月一。毎月1日前後の更新です。

行事ものはなまもの!


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フライングお菓子
正直ハロウィンに間に合うのかわからない。


「ねぇねぇ、お菓子をくださいなっ」

黒のワンピースに、同じく黒のとんがり帽子。大きなつばの下から、くるりと見上げてくる黒の瞳。魔女にしか見えないその姿に、有馬は思わず扉を閉めた。
「ちょっとー!どうしてドアを閉めるのよ!さっさとお菓子を渡しなさいよぉ」
ガンガンガンガンと扉が打ち鳴らされる。
「お菓子をくれなきゃいたずらするわよ!」
なんだかとっても既視感を覚える。
「いい加減にしないと、ハエに変えちゃうんだから」
それは、カエルよりもご遠慮願いたい。もれなくカエルに食べられてしまうではないか。
薄い扉は絶え間なくたたかれ続ける。
とうとう有馬は諦めると、扉を開いた。
ふふん、と魔女は威張る。両手を腰に当てふんぞり返っている彼女の様は、どう見ても『勝ったわ』と言っている。
「さぁ、お菓子をよこしなさい」と、つき出された魔女のふにっとした紅葉手を、有馬は大分上から見下ろした。
「えーっと……、魔女子さん?」
「何よ、そのだっさい名前」
「じゃないよね、やっぱり」

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