ちらみしたNHKの特集がつぼった

ちらみしたNHKの特集がつぼった
ルーナは長い竿を使って、夜中しゅうしゅうと裏道を照らし続けたガス灯の光を消してゆく。
竿は見た目の割に、長すぎて、身体のちいさな彼女には重心を保つのが難しい。それでも、最近ますます腰の悪くなった祖母からこの仕事を受け継いで早半年、心許なかった竿の先を操る術もいくらか見れるものになってきた。
またひとつ明かりを消して、ルーナは竿を肩にかけ次のガス灯へ足を運ぶ。
目を上げれば、はす向かいから大急ぎで坂をくだってくる自転車があった。
「おはよう。あんたまた遅刻じゃないの」
「うるせえ」
新聞配達の少年はちりんちりんとベルを鳴らして通り抜けていく。
道に面した家いえから、漂って来る朝食の匂いを吸い込んで、ルーナは、次のガス灯に竿をかかげた。

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