避難避難

避難避難
エイディルダブラカーリア。
すべての草の根たる偉大な族長ディルダ。
どこまでも似合わぬ名前にシィシアはせせら笑った。
なんと滑稽で愚かな名。
当の王は、すべてを手放し、できることならば滅ぼしてしまいたいとすら願っているのに。
それができぬから、せめてもうこの世を視界に入れぬよう、自分の身が朽ちるのを待ち望んでいると言うのに。
いっそ誰かが殺してあげればよいのだ、とシィシアは遙かに広がる眺望を見下す。
年老いても尚、屈強な王を殺すのは、つい最近まで歩くことすらままならなかったか細い娘には難しかった。
結局、シィシアもまた王の死を望めはしなかったから。

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