お妃さましか知らないこと

お妃さましか知らないこと
おじいちゃんは今日もゲートボールに出かけていった。うきうきしてる。楽しそうだ。ゲートボールの日はいつだってそう。
あやしい。あやしい。ぜーったいにあやしい。


おじいちゃんはね、千代さんに会いにいってるのよ、とおばあちゃんがこっそり教えてくれた。ゲートボールはおまけなの。おじいちゃんと千代さんは昔、コイナカだったんだって。内緒よ、って立てた人差し指を口に当てて、おばあちゃんは、笑ってた。
「ええー。でも、なら、どうしておばあちゃんと結婚したの?おじいちゃんが千代さんを好きだったなんてひどい!おばあちゃんがかわいそうだよ」
「そう?そうねぇ、今だったらそうかもしれないわね。だけど、昔はどこも似たようなものだよ。お家同士の繋がりだからね」
わたしもおじいちゃんよりか、よっぽど源さんのことが好きだったわぁ、とおばあちゃんはうっとりと言って、だけど、手ではせっせとおじいちゃんの大好きなおはぎを作り続けていた。

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