銀世界に永遠を望む

銀世界に永遠を望む
いろんな種類のコインを一緒に見ることが嫌いではない。四角い箱に入ったアクセサリーを一緒に見ることもとても楽しい。
「今のうちに、もう渡しておこうね」
それが、おばあちゃんがよく口にするようになった台詞。


「うわぁ、このお金キラキラしてるねぇ」
「ああ、それは万博の時のだね」
「こっちの橋は?」
「瀬戸大橋ができた時に、郵便局で買ったんだよ」
「ワールドカップのまである。よく集めたね」
「おばあちゃんも、隣のおばちゃんも、こういうの好きだから」
隣のおばちゃんも同じように持ってるよ、とおばあちゃんは隣に住んでいるおばあちゃんのお姉さんのことを付け加えた。記念コインがぎっしりと入った薄いビニール袋。はい、とおばあちゃんは私に差し出した。

「これもね、おばあちゃんには短すぎたから、りつにはどうかしらと思って」
言って、おばあちゃんは箱から取り出した真珠のネックレスを私の首につけくれた。
真っ白のようで、だけど、クリーム色にも光る球。鏡の中で連なる真珠は、私にはどうしてもちぐはぐに見える。
「これはー?これはどうしたの?」
「えーと、どうしたんだったかしらねぇ」
おばあちゃんは首をひねる。買ったのか、それとも、誰かにもらったのか。
箱の中には他にも銀細工のブローチや、水色の宝石がついた指輪。おばあちゃんは、好きなのを選んでいいからね、と言う。早い者勝ち、と内緒話をするように笑って。
「おばあちゃん!このネックレス外れないよ」
「ああ。昔のは留め金が難しいかったから。えーっと……外れないね……どうするんだったかしら?」
「おばあちゃん!」
「つける時は簡単だったんだけど……」
目を細めながら留め金をいじっているおばあちゃんが、鏡越しに見える。さすがに、手元までは映らなかったけれど。
結局その後、真珠のネックレスを相手に、二十分くらい、二人で格闘していたのだ。

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