わたしはいっしょう後悔するだろう

わたしはいっしょう後悔するだろう
黒いヴェールが揺れる。
覗いた見覚えのある面差しに、騎士は息をのみ損ねた。
「・・・さ、ま」
口にした名は彼の人に届いたらしかった。
巡らされた細いうなじ。黒い眼がこちらへむかう。
顔半分をヴェールで隠した婦人は、冷えた感情を無表情に刻む。
昔、選ぶことのできなかった貴婦人は、ひどく醜い刀傷を、隠した顔に負っていた。

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